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事務所通信

毎月、弊所関与先に提供しております事務所通信の「要約版」を掲載いたします。

以下の記事について詳細を知りたい事業者の方は別途お問い合わせページにてご依頼ください。事務所通信ニュースを送らせていただきます。

2021年5月号

ますます重要となる適時・正確な記帳



 会計帳簿の本質的な役割は、「経営者への自己報告機能」と「証拠力の確保」です。
 自己報告機能とは、財産や借入の現況、売上や利益、資金繰りといった経営成績がわかることです。経営者の正しい経営判断のためにも、日々の記帳によって、常に最新の状況を把握できる状態にしておく必要があります。
 証拠力の確保とは、企業自らが適時・正確に記帳した帳簿には、証拠力があり、信頼性も高いということです。例えば、月次の締め後はさかのぼって訂正できない、訂正したときはその痕跡が残る会計システムで作成された帳簿の証拠力は高くなります。証拠力のある帳簿は、いざというときに会社を守るだけでなく、税務当局や金融機関からの信頼性を高めます。



将来を見据え“種まき”をしよう!



 コロナ禍によって大きく変わった人々の消費行動や認識などは、コロナ収束後も以前と同じに戻ることはないでしょう。そういう中で企業は、経営環境の変化に適合していかなければなりません。将来が明確でないのであれば、自社が望む新しい状況を創り出すことが可能です。将来なりたい会社像を描いて、それを実現するための戦略を考えてみましょう。戦略には「他社がマネのできない」「他社がマネをしたくない」自社の強みが必要であり、それを見つけることから始まります。
 そしてその強みを活かすために、商圏、事業、顧客、商品・サービスの機能、品質、価格、納期、販売方法・ルート、設備・施設などに分けて、力を入れるもの、削減するものなどを検討しましょう。



社会保険の適用拡大と年金制度の見直し



 令和4年度は、パートタイマー等への社会保険の適用拡大、在職しながら年金を受給する人についての年金受給の見直しなどが行われます。
○現在、従業員500人超の企業では、月額賃金が8万8千円以上(年収約106万円)など一定の条件を満たすパートタイマー等は社会保険への加入義務がありますが、対象となる従業員数が、本年10月から100人超に、令和6年10月から50人超にまで引き下げられます。
○特別支給の老齢厚生年金の支給停止基準が、報酬と年金の月額合計28万円超から47万円超に緩和されます。
○65歳以降も厚生年金に加入しながら働く人について、働いた分の年金額への反映を毎年(年1回、10月分から)行う在職定時改定制度が導入されます。
○年金の受給開始年齢は、従来70歳までの繰り下げが可能でしたが、4月から75歳まで可能になりました。
以上の改正は働く人たちの働き方にも影響を及ぼすものです。会社としても雇用について見直すきっかけにしましょう。

2019年6月号

小さな会社の「必勝の経営術」① ランチェスター法則で経営を再点検してみよう!


   会社のエネルギー源である顧客を出発点として、①商品、②地域、③業界と客層、④営業、⑤顧客維持、⑥組織、⑦資金と経費という経営を構成する要素に対して、どのような戦略を立てるかが重要です。その手掛かりとなるのがランチェスター法則です。元々戦闘における力関係を表したこの法則は、刀や槍などによる接近戦・一騎討ち戦で成立する「第一法則」と、銃や戦車など射程距離が長い兵器を使い、双方が離れて戦うときに成立する「第2法則」があり、それが経営に応用され、競争条件が有利な会社だけが実行できる「強者の戦略」と競争条件が不利な会社が実行すべき「弱者の戦略」という2つの戦略へと発展しました。
 中小企業が、業績を伸ばすには、強者の戦略で経営しても上手くいきません。中小企業は、弱者の戦略で戦う必要があります。


消費税価格転嫁と価格表示への対応① 増税分をきちんと価格転嫁しよう!


 10月からの消費税率引上げにあたり、2%の増税分を販売価格に転嫁しなければ、自社が増税分を負担することになり、売上や利益が減少し、資金繰りに悪影響を及ぼします。
 消費者との取引(BtoC)においては、価格転嫁にあたり、経営判断に基づいて、税率引上げ前に需要に応じて値上げするなどの価格設定は、事業者の自由であって何ら問題はありません。また、一律に転嫁する必要はなく、競合や市場動向などの事情を考慮して、個々に販売価格を見直すことにより、商品全体で増税分を転嫁してもよいとされています。
 事業者間取引(BtoB)では、消費税転嫁対策特別措置法によって、仕入先への減額要求や買いたたきなどが禁止されています。


貸借対照表は経営者の顔 社長自身が説明できますか?


 貸借対照表を前期と比較して、資産や負債に大きな増減がある場合に、その理由を金融機関から問われたとき、社長自身が説明していますか。社長は、現金預金、売上債権、買入債務、たな卸資産、固定資産、借入金などの主要項目の増減する要因についての理解を深めましょう。
 社長自身が決算書をもとに、実績と資産・負債の増減理由とその対応を説明し、さらに事業計画書をもとに今後の見通しを説明できれば、金融機関からの信頼性が高まります。
 環境変化の激しい時代の経営の舵取りには、社長自身が会計数値から自社の課題に気づいて、対策に取り組むことが求められています。


2019年5月号

目標は“コーヒー1杯”に置き換えて考えてみよう!


   セールスでは、「コーヒー1杯分の料金で~ができます」といったトークがよく使われます。これは「コーヒー1杯」という身近な小さい単位に置き換えることで、相手がイメージしやすくなるためです。
例えば、来期の目標売上を今期から400万円アップして、4,000万円とする計画を立て、具体的な行動計画に落とし込む際、400万円という数字だと漠然として、一見、無理なように思えます。ところが、「コーヒー1杯」と同じように、「1か月あたりの売上をあと〇〇万円増やす」「1日あたりの売上を〇万円にできれば、目標に届く」「1日の来客数をあと〇人増やせばいい」というように考えてみると、現場レベルで実践できる行動やアイデアを具体的な行動計画に落とし込みやすくなります。


増税前に確認しておきたい消費税計算の基本


 消費税の納税額は、「課税売上に係る消費税額」から「課税仕入れ等に係る消費税額」を差し引いて計算します。原則的な計算方法(本則課税)では、課税、非課税、不課税のいずれかに取引を分類し、それぞれ集計して、課税売上、課税仕入れ等を求め、納税額を計算します。
 本則課税では、課税仕入れを、課税売上高に対応するもの、非課税売上高に対応するもの、両方に対応するもの等、その内容によって区分する個別対応方式と、課税仕入れの区分を要しない一括比例配分方式があり、それぞれの計算方法の違いから、納税額に差異が生じます。
 消費税の計算について、どちらの方法が良いかを判断するためには、課税仕入れについて、内容別に区分する必要があります。そのため、日々の会計処理において、請求書等に基づき正しく区分を記載し、月次決算を行い、早い段階で消費税の納税額の判定を行える体制を整えましょう。


個人事業者の事業承継を税制面から支援 ~事業用資産の相続税・贈与税が実質ゼロに!~


 個人事業者の高齢化が急速に進むなか、法人向けの特例事業承継税制に続いて、個人事業者の事業承継税制が創設されました。
この制度は、後継者が一定の事業用資産(土地、建物、機械、器具備品、車両運搬具、生物など)を承継する際、それらに係る相続税や贈与税の全額を納税猶予することで、後継者の負担を軽減し、事業承継を進めやすくしようというものです。
手続きは、2024年3月末日までの5年以内に、認定経営革新支援機関の指導・助言を受けて「承継計画」を作成し、都道府県に提出し、2028年12月末日までに実際に相続又は贈与を行います。
納税猶予された税額は、後継者が亡くなるまで、承継した資産を保有し、事業を続ければ、納税が免除されます。


2019年4月号

4月から労働時間の状況の把握が義務化!~出勤簿への押印だけではダメ!~


   事業主(経営者)は、例えば、残業時間(残業代)を算定するには、必然的に従業員の労働時間の状況を正しく把握しなければなりませんが、労働基準法上は明文化されていませんでした。しかし、長時間労働の是正などを柱とする働き方改革関連法のなかで、労働安全衛生法が改正され、労働時間の状況を把握する義務が明文化されました。罰則はありませんが、労働基準法と合わせて、経営者の責務がより明確化されました。
 労働時間の状況の把握方法は、具体的には、次の方法によります。
 ①使用者が、自ら現認することにより確認する。
 ②タイムカード、ICカード、パソコン使用時間の記録等を基礎として確認し、適正に記録する。


消費税:レジ等の対応に補助金を活用しよう!~補助率や対象が拡大!~


 消費税の軽減税率の実施に伴い、複数税率に対応したレジの導入や電子的受発注システムの改修が必要となる中小事業者を対象に、その費用の一部を補助する「軽減税率対策補助金」があります。
 本年から制度が拡充され、新たに「区分記載請求書等保存方式」に対応したシステムの改修・機器の導入の費用が補助対象となったほか、補助率の引き上げ(3分の2から4分の3)や、対象業種の追加(旅館・ホテル等の一部)が行われました。
 申請は、事業者自身が行う場合は、9月30日までに導入・改修、支払いを完了し、12月16日までに申請します(事後申請)。あるいは、改修等を指定事業者に依頼する場合は、6月28日までに交付申請を行います。


資金繰りの落し穴 急激な売上の増加や落ち込みには要注意!


 一般に、取引は掛け(掛売上、掛仕入)で行われるため、売上の増加に伴って売掛金も増加し、売上の増加に先行して仕入れも増え、買掛金も増加します。通常は、売掛金の回収と仕入れ・販管費の支払いのサイトにズレがあるため、利益と資金は一致しなくなります。帳簿上は利益が計上されていても、資金が残っているとは限りません。
売上が急激に伸びたときは、仕入も急増しますから、資金繰りが厳しくなります。反対に、売上が急に落ち込んだときは、仕入の減少とともに買掛金が減少し、さらに売上が順調な時の売掛金が回収されることから、一時的に資金繰りが良くなることがあります。これを「業績が良い」と錯覚すると、落ち込みへの対応が遅れることがあります。


2019年3月号

決算を機に、自社の財産の状況を確認・整理してみよう


   自社の財産の中には、財務体質を悪化させるものがあります。一般に、業績の悪い企業ほど、売掛金、在庫、固定資産、仮払金や会社と役員間の貸し借りが多い傾向にあります。
 ①未回収のまま滞留している売掛金は、再請求書や督促状を相手方に送付し、債権があれば、その回収可能性を検討しましょう。
 ②もう売れない商品、処分すべき商品が長期間残っていれば、セールや廃棄などで処分します。
 ③使用していない固定資産(機械装置など)は、除却や売却を検討しましょう。
 ④未精算の仮払金はすぐに精算し、貸借対照表に残高を残さないようにします。
自社の財産を洗い出し、無駄なものが決算までに整理し、スリム化をはかりましょう。


税率引き上げ後も8%の税率が適用できる取引を確認しよう


 10月1日からの消費税率が10%に引き上げられますが、一定の取引については、3月31日までの契約であれば、10月1日以後の引渡しであっても、8%の税率が適用される経過措置があります。
 主なものに、建設工事や大型機械の製造請負(受注生産)や家賃、リースのほか、冠婚葬祭互助会の契約、新聞、テレビ、チラシ、カタログ、インターネット等による通信販売(通信教育や電子書籍の配信等を含む)、有料老人ホームの入居一時金などがあります。適用要件を確認し、駆け込み需要を取り込みましょう。


4月1日改正労基法施行! 有給休暇の取得が義務化されます


 4月から、年10日以上の有給休暇(有休)の取得の権利がある従業員に対して、会社はそのうち5日分について有給休暇を取得させることが義務化されます。
 取得させる方法には、従業員ごとの有休消化日数を把握し、消化日数が5日未満であれば、会社が有休の取得日を指定する方法(個別指定方式)のほか、会社が計画的に有休取得日を指定する方法(計画的付与制度の導入)があります。
 計画的付与制度は、企業の実情に合わせて、①全社一斉に特定の日を有休にする、②部署、部門、営業所単位で有休をとる、③夏季(盆)、年末年始、ゴールデンウィークなどに合わせて、従業員一人ひとりの有休取得日をあらかじめ決める、などの方法があります。
 いずれの方法も、5日分の有休の義務化について、従業員自らが有休を取得した日数、計画的付与制度によって取得させた日数分は、義務化の5日分から除かれます。


2019年2月号

外部環境の変化を分析して、自社の新しい戦略を考えよう


   AI技術の進展、人口減少、商圏の変化、取引先・競合他社の動向など外部環境が急速に変化する中、その変化を「機会」と「脅威」の視点から洗い出し、そこから抽出した外部環境を見ながら、さらに内部要因として、自社の「強み」「弱み」を洗い出しましょう。
 そのための手法がSWOT分析で、次4つの視点を可視化し、検討材料を明らかにします。
「機会」…市場・消費の動向、商品の需要を整理し、様々なビジネスチャンスを検討する。
「脅威」…自社の努力ではどうにもできない外部環境のマイナス要因を整理する。
「強み」…同業他社と比較して、具体的に「機会」に活かせる強みを考える。
「弱み」…成長発展や改革のネックとなる点を整理する。
 これまで成立していたビジネスが成り立たなくなる前に、外部環境をきちんと捉え、自社の経営を再確認してみましょう。


軽減税率の導入で請求書・レシートの記載が変わります


 消費税の軽減税率が導入されると、取引ごとに適用される税率(10%と8%)を区分経理する必要があり、現在の請求書の記載事項に新たな事項を追加する必要があります。
①2019年10月1日からは、簡易な措置として、現行の請求書の記載事項に「軽減税率の対象品目である場合はその旨」「税率ごとに合計した対価の額(税込)」を追加した「区分記載請求書等保存方式」が導入されます。
②2023年10月1日からは、「適格請求書等保存方式」(インボイス)が導入され、請求書の記載事項に、さらに「発行事業者の登録番号」「税率ごとに合計した対価の額(税込又は税抜)及び適用税率」「税率ごとに合計した消費税額」が追加されます。


平成30年分 所得税の確定申告はここに注意!


 平成30年分の所得税の確定申告期間は、2月18日(月)~3月15日(金)です。
●個人事業者は、事業収入(事業上の売上、商品の自家消費や贈与、従業員への貸付利子、仕入割引、作業くずの売却代金など)と、必要経費(販売した商品の仕入代金、広告宣伝費、従業員給与、水道光熱費など事業に必要な経費)を正しく計算し、所得を算定します。
店舗併用住宅の家賃や水道光熱費など、事業上の経費と家事費が混在する費用(家事関連費)は、事業上必要な部分が明らかで、合理的に按分できる場合は、事業に必要な部分については、必要経費として認められます。
●サラリーマンなどの給与所得者の大半は、確定申告の必要はありませんが、医療費控除や雑損控除、上場株式の譲渡損の繰越しの適用を受ける場合や、ネットでの収入、生命保険の一時金など給与以外の所得がある場合には、確定申告が必要です。


2019年1月号

企業存続のために最も大切な「利益」の考え方とは?


   経営学者のP.F.ドラッカーは、「利益」には3つの役割があるといいます。
 第1は「事業の妥当性を評価する役割」であり、自分たちの仕事ぶりを表す指標の一つになります。
 第2は「事業活動における様々なリスクをカバーする役割」であり、将来の不確実なリスクに備えるためには、キャッシュを増やすことが必要です。
 第3は「資金調達手段としての役割」であり、利益は投資資金の源泉となり、融資の際の定量的な評価の一因になります。
 会社は、目指す目標を実現するためにコストを十分に賄えるだけの利益を生み出す活動に力を入れなければなりません。


飲食料品業だけではない!軽減税率はすべての事業者に影響あり!!


 消費税率10%への引き上げと同時に、飲食料品等を対象にした8%の軽減税率制度が導入されます。軽減税率は、飲食業や小売業、食品卸や食品製造業など飲食料品を販売する事業者だけでなく、すべての事業者に影響します。
 飲食料品を販売する事業者は、請求書やレシートを発行する際に、8%と10%の税率ごとに区分した記載をしなければなりません。
 飲食料品の販売がない事業者は、仕入、販売には10%の税率が適用されますが、経費として飲食料品を購入する場合には、8%の税率が適用されるため、帳簿への記帳にあたっては、税率ごとに区分しなければなりません。
 改正消費税への対応には、時間をかけて準備する必要があります。早めに取り掛かりましょう。


1月13日から施行!「自筆遺言」が変わります


 平成30年7月成立の改正民法(相続法)において、自筆証書遺言の作成要件が緩和され、1月13日から施行されます。
 これまで、自筆証書遺言の作成は、全文が自書でなければならず、作成時の負担は相当のものでした。改正によって、添付する財産目録については、パソコンでの作成や通帳のコピー、登記事項証明書など、自書でないものが認められ、作成時の負担軽減が図られます(ただし、全頁に署名・押印が必要です)。
 遺言書の保管時における紛失、廃棄、改ざん、隠匿や相続を巡る争いを防止するため、法務局において自筆証書遺言を保管する制度が創設されます(2020年7月10日施行)。
 改正によって、自筆証書遺言の作成、保管が容易になることで、遺言書を活用した相続対策が期待されます。


2018年12月号

消費税率10%への引上げに伴う賃貸借・請負契約等の注意点


 2019年10月1日から、消費税率が8%から10%へ引上げられます。賃貸借、リース、請負契約などで一定の契約については、10月1日以降の引き渡し等であっても、8%の税率が適用される経過措置があります。
 ○店舗や工場などの賃貸借やリース契約(資産の譲渡によるものを除く)は、2019年3月31日までに契約し、9月30日までに貸付けが開始されれば、10月1日以降も8%の税率が適用されます。
 ○請負契約の工事代金は、原則として引渡し時の消費税率が適用されますが、3月31日までの契約であれば、10月1日以降の引渡しであっても、8%の税率が適用されます。


年末調整事務はここに注意~配偶者控除等申告書の様式変更~


 配偶者控除及び配偶者特別控除等の大幅な見直しによって、今年の年末調整では、次の3点に注意が必要です。
 ①従来の「保険料控除申告書兼配偶者特別控除申告書」が、「保険料控除申告書」と配偶者控除等申告書」の2枚に分かれました。
 ②配偶者控除又は配偶者特別控除のいずれかの適用を受けるには、「配偶者控除等申告書」の提出が必要です。配偶者控除を受ける場合、昨年までは提出が不要だったため、提出もれに注意しましょう。
 ③新様式の「配偶者控除等申告書」には、給与所得者本人とその配偶者の本年中の「所得の見積額」と、「所得の区分判定」を記載します。


2018年11月号

自社株式の現状を確認してみよう


 自社株式の中に名義株はないでしょうか。オーナー企業であっても、経営者が自社株式を100%保有しているとは限りません。会社設立時に、創業者が100%出資していても、家族、親戚、友人、従業員から株主として名義を借りたままになっていることがあります。
 名義株は、税務上、実質的な所有者である経営者の相続財産とみなされ、相続税の課税対象となります。経営面では、名義株主から株式配当金の支払いや買取りを請求される可能性もあります。
 事業承継に取り組む前に、名義株の有無を確認し、本来の株主の状態にすることが事業承継のスタートラインです。それから、具体的な事業承継計画を立てて、その過程で特例事業承継税制の適用の可否を検討しましょう。


修繕費か?資本的支出か?


 機械や建物の外装塗装、壁紙・床材の張り替え、車両の修理、ソフトのバーションアップなどの費用は、「修繕費」として支出した年度の経費にできるか、あるいは「資本的支出」として資産計上しなければならないか、税務上の判断が必要になります。その修理の内容が、固定資産の通常の維持管理、原状回復であれば、その費用の金額の大きさにかかわらず「修繕費」になります。
 建物の修繕工事の内容、機械設備の高性能化などによって、耐用年数が延びるなど、固定資産の価値や性能・耐久性を向上させる修理・改良であれば「資本的支出」として固定資産に計上します。


折り返し点での業績比較のポイント


 事業年度の上半期の終了点は、期末の決算に向けての折り返し点になります。半期の実績数値をもとに業績比較を行いましょう。
 損益計算書は、売上や利益、仕入、販管費の前期比較を行い、増減の要因について、例えば、得意先・製品・担当者別に売上を見る、仕入や製造原価は、単価の上昇、材料使用量、不良・ロスの増加の有無を確認する、など具体的に調べてみましょう。接待交際費や販売促進費、広告費の増加は、本当に必要な支出なのかを検討することも必要です。
 貸借対照表は期首比較を行い、損益計算書の利益の増加に見合う現金預金の増加がない場合、その要因は、売掛金や在庫の増加、固定資産の購入や借入金の返済なのかを確認します。損失の場合は、どのように資金調達が行われたのか、短期借入金や仕入債務の増加を確認しましょう。


2018年10月号

相続時の配偶者の権利を大幅に拡大~改正民法(相続法)のポイント~


 高齢社会の進展を踏まえ、残された配偶者の生活基盤の安定を図ることを主とした民法(相続法)の大幅な改正が行われました(平成30年7月13日公布)。
 改正では「配偶者居住権」が創設され、夫婦で住んでいた住居を配偶者以外の相続人が相続しても、残された配偶者がそのまま住み続けることができるようになりました。また、従来、婚姻期間が20年以上の夫婦間において、配偶者へ住居を生前贈与した場合には、遺産の先渡しとみなされ、遺産分割の際に、特別受益の持ち戻しが行われ、配偶者の取得財産が少なくなっていました。改正では、遺産の先渡しを受けたという取扱いをなくし、配偶者により多くの財産を残せるようになりました。


被災したとき・被災地を支援したときの税制上の支援


 自然災害によって法人や個人が被害を受けた場合、税制上の支援があります。法人の場合、復旧費用を修繕費として損金処理することが認められるほか、災害によって生じた損失による欠損金額の繰越控除や繰戻し還付が受けられます。個人の場合は、住宅や家財の損害について、所得税の雑損控除などが受けられます。
 被災した取引先や被災地を支援する場合にも優遇措置があります。法人が贈った取引先への災害見舞金や救援物資などは全額を損金(経費)にすることができます。
 個人で義援金などを贈る場合には、その自治体へ直接寄附するか、ふるさと納税を活用すれば、寄附金控除が受けられます。


改正労基法施行前に知っておくべきこと 残業させるにもルールがあります


 平成30年6月に、長時間労働の是正を柱とする改正労働基準法等(働き方改革関連法)が成立し、中小企業は2020年4月から施行されます。改正を前に、労働時間と時間外労働(残業)についてのルールを再確認しましょう。
 会社が法定労働時間(1日8時間・1週40時間)を超えて従業員に残業をさせるためには、会社と従業員との間で「時間外労働に関する協定」(通称36協定)を締結し、労基署へ届け出なければなりません。この36協定を締結すれば、原則として年360時間までの残業が認められます。また、繁忙期など、この限度を超えて残業をさせなければならない「特別な事情」がある場合には、「特別条項付の36協定」を締結することで、この限度時間を超えることが認められています。自社の36協定に不備がないか、確認しましょう。


2018年9月号

経営者マインドの維持には経営計画が必要


 経営には不安がつきものですが、企業が将来に向かって、経営ビジョンや目標を達成する経営計画があれば、そこへ向かって事業に取り組む意欲が湧いてきます。経営計画は、経営者マインドを維持するうえでも大切なものです。
 このような、将来の夢や目標を描いた計画のほか、会社が確保すべき利益を積み上げた計画、融資を受けるために自社の現状や将来性をディスクローズした計画、特例事業承継税制や早期経営改善計画などの申請に必要な計画など、経営計画は一つではなく、目的ごとに数種類の計画があっても良いものです。


国が進めるデジタル・ファーストで税務はどう変わる?


 税務行政のデジタル化に向けた仕組み作り進んでおり、今後10年で、税務申告手続きなどにおいて紙からデジタルへの動きが見通されています。
 個人の所得税関係では、年末調整での保険料控除や住宅ローン控除において、控除証明書が電子化され、従業員がネット環境を通じて会社へ提出可能になり、会社の事務負担が軽減されます。医療費控除やふるさと納税などの還付申告を、スマートフォン等からできるようになります。
 企業関係では、電子申告が大企業は100%化され、中小企業も将来の100%化に向け、当面は85%化(現行75%)を目指すとしています。消費税税率アップや軽減税率の導入に向け、電子帳簿化が推進されます。


期中に役員給与を減額せざるを得ないときの注意点


 定期同額給与や事前確定届出給与は、原則として、期中に減額した場合、全額又は一部が損金算入を認められません。ただし、役員の地位・役位の変更があった、経営状況が著しく悪化した、役員給与の支給額を決める際に予測できなかった事由があれば、役員給与の減額後も損金算入が認められる場合があります。この場合は、その事由が「やむを得ない事情」かどうかによって判断されます。
 役員給与の支給額を決める際には、前年実績、利益計画、借入元本返済を踏まえ、よく検討したうえで、役員給与の額を決めなければなりません。


2018年8月号

特例事業承継税制が適用できるかどうかのチェックポイント


 利用しやすくなり関心の高い特例事業承継税制(特例税制)ですが、適用には、先代経営者、後継者、会社に一定の要件があるため注意が必要です。
 先代経営者は、相続等の開始前までに、代表者であったこと、被相続人と同族関係者で議決権株式総数の50%超を保有し、かつ筆頭株主であったことなどが要件で、後継者は、株式の贈与までに代表者であること、役員就任後3年を経過していること、同族関係者のなかで、議決権数の最上位者であること、などが必要です。
 会社は、資産管理会社(一定のものを除く)、医療法人、社会福祉法人、風俗営業会社などは適用対象外になるため注意が必要です。


月次決算データは経営者と社員、金融機関、会計事務所との共通語


 月次決算は、毎月の業績をいち早く掴み、経営に役立てるものですが、月次決算データを経営者だけが利用するのではなく、経営者と社員、金融機関、会計事務所と間で業績を見るための共通語として経営に活かしましょう。
 月次決算データを共有化することで、経営者と社員が同じ方向を向いて営業活動に取り組むことができます。金融機関に対しては、経営状況を経営者が説明することで、金融機関からの信頼が高まります。会計事務所との間で、月次決算データを対話ツールとして活用し、的確なアドバイスを受けましょう。
 月次決算データを共通語として経営に生かすには、月次決算の早期化と精度の向上が必要になります。そのためには、売上、仕入れを早期に掴む仕組みづくりや経費の月割計上、概算計上などについて、自社に合った経理処理を当事務所とともに検討しましょう。


労務トラブルを防ぐためのルールブックはありますか?


 「働き方改革関連法」は、経営者にとってみれば、労働規制の強化といえます。しかし、中小企業では、労働法規の理解が不十分のまま、雇用についての最低限のルールすら守られていない例が多くあります。
 近年、従業員の労働法への意識が高まっており、在職中は何事もなくても、退職後に訴えを起こされる例も決して少なくありません。まずは、会社のルールブックとして、作成義務の有無に関わらず、就業規則を整備しましょう。就業規則は、労務トラブル防止に役立つほか、社員が安心して働けるという効果があります。


2018年7月号

特例事業承継税制を活用しよう


 要件等が大幅に緩和され、特例事業承継税制(特例税制)が大変利用しやすくなりました。特に、対象株式数の上限が撤廃され、猶予対象の評価割合が贈与、相続ともに100%となったことで、後継者の税負担がゼロになりました。また、雇用確保要件も実質的に撤廃され、要件を満たさなくなっても、認定経営革新等支援機関の意見等があれば猶予が継続されます。
 この特例税制の適用を受けるには、平成35年3月末までに、認定経営革新等支援機関の指導・助言を受けて「特例承継計画」を作成し、都道府県に提出する必要があります。 


知らなかったではすまない“保証”の注意点


 中小企業経営者は、融資その他の取引において、保証(連帯保証)を行っている例が少なくありません。経営者の保証(保証債務)は、経営者の死亡によって残された家族(相続人)に承継されます。生前に、家族に知らせないまま保証人になっていたことから、突然、家族に多額の債務の弁済が求められ、財産を失ってしまう例が少なからずあります。
 他社や知人・友人の債務を保証している事実があるなら、家族がその事実を確認できるようにしておきましょう。
 また、2020年4月施行の改正民法では、安易に知人の保証人になることがないよう公正証書の作成が義務付けられるなど、保証人保護の規定が設けれています。


日々の記帳と発生主義の徹底


 経営者が、業績をいち早くつかみ、正しい経営判断をするためには、月次決算が不可欠ですが、日々の取引の会計帳簿への記入や仕訳データを入力する目的は、まず、毎日のお金や取引の流れを、もれなく、ありのままに記録することにあります。そして、複式簿記のルールに則って、正しく計算された月次決算資料や決算書は、的確な経営判断の基礎になります。
 月次決算の基本は、日々の正しい記帳(記録と計算)と、現金管理、証憑書類の整理保存、発生主義による会計処理にあります。


2018年6月号

役員給与の決め方と税務上の注意


 税務上、損金にできる役員給与の改定は、基本的に、事業年度開始から3か月以内です。
 経営者は、自身の役員給与の額を決める際、主観ではなく、あくまでも前年実績、当期の利益計画や業績見込み、1年以内の借入金の返済額などを基礎にして、経営の現状を客観的に捉えて決めましょう。
 事前確定届出給与を届けた場合は、実際の支給時期と支給額が、事前の届出内容と完全に一致していなければ、損金算入が認められませんので、注意しましょう。 


経営者が知っておきたい労働保険の基礎知識


 従業員の業務中や通勤途中における労働災害(労災)については、労災保険から療養費や休業補償が行われます。労災保険か健康保険のどちらが適用されるかが問題となるのは、通勤途中に、本来のルートを外れて、どこかに立ち寄った際に、けが等をした場合です。保育所への送迎や道路工事・渋滞による迂回、日用品の購入、通院、親族の介護などは、通勤途中として労災が適用されます。
 本来、経営者は労災に加入できませんが、一定の企業規模以下の中小企業の経営者(その家族従業員・役員を含む)であれば、労災保険へ加入できる特別加入制度があります。


土地・家屋の固定資産税はこう決まる!


 平成30年度は、3年に一度の土地・家屋の固定資産税評価額の評価替えが行われ、固定資産税の税額が見直されます。
 家屋については、同じ家屋を再度新築した場合の費用と、築年数に応じた損耗を考慮して評価されます。建築費の上昇によって評価前の評価額を上回ることになる場合は、税負担を考慮して、評価前の評価額に据え置く措置がとられています。そのため、家屋については、年々古くなっても、一般に固定資産税の税額が変わりません。
 住宅やアパートの敷地として利用されている「住宅用地」は、税負担を軽減する目的から、その面積の広さによって固定資産税を減額する措置がとられています。


2018年5月号

中小企業経営を応援する最新の補助金等


 中小企業を応援する様々な補助金が用意されています。主なものとして、業務効率や売上のアップを図るためにITツールを導入する場合の「IT導入補助金」、事業承継をきっかけに経営革新や事業転換を行う際の費用を補助する「事業承継補助金」、新サービスの開発や生産プロセス改善のための設備投資費用などを補助する「ものづくり・商業・サービス経営力向上支援補助金」、経営計画に基づく販路開拓を支援する「小規模事業者持続化補助金」などがあります。
 また、税理士等の経営革新等認定支援機関の助言を受けて早期経営改善計画を作成する場合の費用を補助する「早期経営改善計画策定支援事業」も引き続き実施されています。  


個人住民税の特別徴収と「決定通知書」の見方


 5月に入ると、住民税の特別徴収税額の決定通知書が送られてきます。決定通知書が届いたら、記載内容や税額を確認し、決定通知書(従業員用)を従業員に渡しましょう。
 従業員の給与から天引きした住民税は、翌月10日までに各市長村に納付します。納付が遅れると延滞金が加算されます。従業員が常時10人未満の場合、市町村への申請によって、年2回の納付が認められます。
 住民税の決定通知書(従業員用)からは、所得に対して原則10%の税率が課税される「所得割」と、一律に課税(原則年額5,000円)される「均等割」、ふるさと納税(寄付金控除)などの住民税額からの控除分、毎月の給与から天引きされる「納付額」がわかります。


有給休暇についての素朴な疑問


 繁忙期に従業員から有給休暇(有休)の取得申請があった場合、有休を希望通りに与えることが原則です。しかし、「同じ時季に多くの従業員が休む。代替要員の配置が難しい」など事業の正常な運営が妨げられる場合、経営者は取得時季の変更を求めることができますが、単に「日常的に忙しい。人手が足りない」という理由では、時季の変更を求めることはできません。事前の取得申請を求めることができるため、あらかじめ他の従業員との調整をはかるようにしましょう。
 また、一斉付与、交替制付与、個人別付与などの方法で、あらかじめ有休の取得日を割り振る計画的付与制度なども活用して、有休の取得促進をはかりましょう。


2018年4月号

自社の概要をわかりやすく伝える「ビジネスモデル俯瞰図」を作る 


 融資申込や経営計画の提出にあたり、金融機関などの外部者に自社の概要を説明する機会が増えています。その際、事業内容、理念・ビジョン、役員構成、従業員数、沿革などの文章情報だけでなく、ビジネスの商流・物流・資金の流れを図式で表した「ビジネスモデル俯瞰図」を作成すると相手に事業の全体像が一目で伝えやすくなります。ビジネス全体を俯瞰することで、自社の現状と課題を明らかにすることができるため、経営計画の策定や改善策を立てる一助にもなります。


出産・育児による離職を防ぐ働きやすい職場づくり


 出産を控えた女性従業員から請求があれば会社は産前休業を与える必要があり、産後については、原則として8週間は就業させることができません。また、原則として、育児休暇の申請を受ければ、子が1歳になるまで育児休業を与える必要があります。
 産前・産後、育児休業期間中は、従業員本人と会社負担の保険料が免除されるほか、従業員には、出産手当金や出産育児一時金、育児休業給付の支給などの制度もあります。
 経験豊富で優秀な人材の離職を防ぐためにも、情報の周知や社内体制を見直してはいかがでしょうか。


経理・総務担当必見!
従業員の異動に伴う税務・労務の手続


 4月は、新入社員の入社や従業員の扶養家族の異動がある時期です。家族に就職などの異動があった従業員や新入社員からは「扶養控除等(異動)申告書」の提出を受けるとともに、新入社員には、申告書にマイナンバーを記載してもらいましょう。
 新入社員が入社した場合、入社日から5日以内に健康保険・厚生年金保険の資格取得の届出、入社日の翌月10日までに雇用保険の資格取得の届出が必要です。


2018年3月号

経営者保証のない融資が広がる


 中小企業融資において、経営者の9割が個人保証を提供し、うち半数以上がその解除を望んでいます。
 「経営者保証に関するガイドライン」では、経営者が会社の資金や資産について公私の区別を明確にすること、会社の資産・収益力によって借金返済が可能であると判断できること、金融機関へ財務情報を提供すること、など一定の経営状況を満たせば、個人保証のない融資や既存の保証の解除などの可能性があるとしています。
 健全経営に取り組み、個人保証のない安心感のある経営をめざしましょう。


会社と役員の資産・経理を明確に区分する


 中小企業では、会社の資産と役員個人の資産との区別が曖昧になりがちです。
 会社と役員との間の金銭や不動産の貸し借りは、通常の取引と同様に、契約書の作成や、利息や家賃の支払いが必要な場合があります。事業に関係のない役員の個人的な支出は、税務上、役員給与となり損金への算入が認められません。金融機関からも厳しい眼で見られます。
 本業の業績が良くても、役員の私的流用が多いと資金繰りが苦しくなり、経営に悪影響を及ぼすだけでなく、社内全体のモラルの低下を招きます。自社の状況を見直しましょう。


再点検!売掛金管理と回収の5つのポイント


 自社の「売掛金管理と回収の5つのポイント」を押さえ、売掛金の不良債権化や貸し倒れのリスクを小さくするように再点検してみましょう。
 1.得意先との情報共有を図り、支払期日などの認識を一致させる。
 2.営業担当者には、売掛金未回収の正当な理由を報告させる。
 3.回収遅れの原因となる請求書の発行遅れや誤請求に注意する。
 4.債権の消滅時効に注意して、内容証明郵便による請求などの手段を検討する。
 5.最終手段として、法的手続(支払督促、少額訴訟など)を検討する。


2018年2月号

成り行き経営からの脱却
~黒字化のための経営計画作成ステップ~


 経済が右肩上がりの時代は、資産の含み益を担保にした融資や、資産売却による借入金返済が可能でした。しかし、経済が低成長の時代に入った今、これからは、黒字を重ねて利益を内部留保し、経営基盤を安定させなければ、企業の継続が難しくなっています。
 会社を継続させるために、最低限必要な売上高と利益を確保するための経営計画を作成し、目標に向かって経営することが必要になっています。
 黒字化を目指した経営計画の作成を通じて、自社の経営課題を明らかにして、その改善策を図ることが成り行き経営からの脱却になります。


身の丈にあった借入れとは?


 設備資金の借入れにあたっては、毎年の返済額を「減価償却費の範囲内」に収める返済計画を立てましょう。減価償却費は、資金流出のない費用であるため、この範囲に返済額が収まれば資金繰りが楽になり、利益を内部留保として蓄積することができます。このような返済計画での借入れが困難であれば、「減価償却費と税引後利益の合計の範囲内」に収めるようにしましょう。
 「TKC経営指標(BAST)」の「借入金対月商倍率(月)」「自己資本比率(%)」の数値から、赤字企業ほど、借入金が多く、自己資本の割合が低い傾向にあることがわかります。自社の数値と比べてみましょう。


所得税の確定申告のもれに注意!


 個人事業者や不動産オーナー、給与以外の収入がある人などは所得税の確定申告が必要です。以下のような申告もれがないか、確認しましょう。
○満期保険金・解約返戻金の受け取りは、一時所得として申告が必要な場合があります。
○ふるさと納税の返礼品や懸賞金、競馬の払戻金なども一時所得です。満期保険金などとの合計で50万円を超えると、申告が必要になることがあります。
○医療費控除額は、平成29年中に支払った医療費の総額から、保険会社からの保険金や高額療養費などによる補てん金額を差し引いて計算します。
○外国為替証拠金取引による利益は、雑所得として申告が必要です。
○ふるさと納税のワンストップ特例は、確定申告をすると無効になります。確定申告において、あらためて寄付金控除(ふるさと納税)の申告が必要になります。


2018年1月号

経営理念を身近に、日々の行動につなげる1年にしよう


 自社に経営理念はありますか。その経営理念は、社内に浸透し、活かされていますか。せっかくの経営理念を活かせていない例が少なくありません。一方で、経営理念の実践のために様々な取り組みをしている企業も多くあります。
 本誌では、事例として「理念、年度方針、数値目標などを記した理念手帳の全社員への配付と社内勉強会を通じて、経営理念の実践に取り組む美容院」と「経営理念を文化として、個々の業務の中に根づかせるために具体的な行動指針を定め、実践している歯科医院」を紹介しています。
 新年を迎え、事例を参考に自社の経営理念の浸透について考えてみましょう。


平成30年1月からの配偶者控除等の改正の影響は?


 平成30年1月から、配偶者控除と配偶者特別控除が改正されます。例えば、夫がサラリーマンで妻が夫の扶養の範囲で働く場合、以下の点に注意が必要です。
○妻の収入が年103万円を超えると、配偶者控除に代わって適用できる配偶者特別控除が大幅に拡大され、妻の収入が年150万円以下(改正前:105万円未満)であれば、最高で38万円の所得控除が受けられるようになりました。
○配偶者控除・配偶者特別控除に所得制限が設けられ、夫の収入が年1,120万円を超えると控除額が逓減し、年1,220万円を超えると控除を適用できなくなりました。

 改正によって、制度が複雑になりましたが、夫の年収(給与収入のみ)が年1,120万円以下であれば、従来と変わりません。本誌では、配偶者控除等の額を確認できるチャート図を掲載しています。


業績改善の打ち手 ~自己点検チェックリスト~    


 どうして赤字経営ではだめなのでしょうか。これまでは、赤字続きで資金不足に陥っても、銀行からの借入れや社長の個人資産でカバーすることができました。しかし、これからは、黒字でなければ、借入れも難しくなり、個人資産もやがて枯渇します。状況は変わり、黒字でなければ、会社の存続が難しい時代になっています。
 業績改善に取り組み、黒字化をめざしましょう。本誌では、限界利益率の改善、固定費の削減、売上アップの視点から、改善策のヒントをチェックリスト形式で掲載しています。 


2017年12月号

期中(月次・四半期等)の業績検討の重要性
~自社の足腰を鍛え、金融機関からの信頼を得る~
 
  


 経営計画(予算)を立てて、業績目標を明確にして営業活動を行いますが、決算直前になって目標と予算との大きな差異に気付いても、もはや挽回することはできません。目標達成のためには、期中に業績検討を行って、予算と実績の差異に気付き、その原因を把握し、対策を打つことです。そのため、期中に計画と実績の相違を検証するための業績管理の仕組みをつくり、実践しましょう。
 さらに、その情報を金融機関へ積極的に提供する企業が高く評価される時代が来ています。本誌では、期中の業績管理によって経営改善に取り組んだ企業の事例を紹介しています。


小さな単位で業績を見てみよう


 業績管理は、部門別に行うことで、課題がより明確になります。部門別業績管理は、決して難しくはありません。部署や部門といった名称にとらわれず、例えば、商品群別や営業担当者別、営業エリア・地域別、得意先別など、社長自身が知りたい「小さな単位」に分けてみましょう。
 部門別で業績を見ると、「何が自社の収益に貢献しているのか。何が損失を出しているのか」について、社長の感覚ではなく、数値で客観的に把握することができます。月次決算と併せて、部門別で業績を把握し、利益率やコスト、採算性が明らかになれば、業績向上のための対策がそれだけ的確になります。また、従業員に利益やコストへの意識、目標達成への責任感が生まれます。


平成30年分の
「扶養控除等(異動)申告書」の記載が変わります
   


 平成30年からの配偶者控除と配偶者特別控除の大幅な改正に伴い、平成30年分の「扶養控除等(異動)申告書」の様式が変更され、従来の「A 控除対象配偶者」欄が「A 源泉控除対象配偶者」へと名称が変わりました。本欄の記載対象は、次の条件を満たす場合です。従来との相違は、納税者本人に所得制限が設けられたこと、配偶者の年収が103万円を超えても150万円以下であれば記載対象になることです。
①納税者本人(配偶者控除を受ける人)の平成30年中の所得の見積額が900万円以下
(給与収入のみの場合、年収1,120万円以下)
②納税者本人と生計を一にする配偶者の平成30年中の所得の見積額が85万円以下
(給与収入のみの場合、年収150万円以下)
※青色事業専従者として給与支払いを受ける人や白色事業専従者でないこと 


2017年11月号

 平成29年のパート収入と税金・社会保険の扶養の範囲  


 平成29年のパートの収入と税金と配偶者控除等については、来年(平成30年)からの配偶者控除等の改正と混同しないように注意しましょう(今年は従来通りです)。
 妻の収入が103万円以下であれば、妻に所得税は課税されず、夫は配偶者控除(38万円)を受けることができます。妻の収入が103万円を超えても、夫は配偶者特別控除(3万円~38万円)を受けられる場合があります。本誌では、配偶者控除等と社会保険の扶養の範囲を一覧化しています。


事業承継は社長の仕事  


 今後5年で、経営者の30万人以上が70歳以上になるとされ、多くの企業が事業承継のタイミングを迎えます。中小企業庁においても、今後5年をめどに事業承継を集中的に支援するとしています。
 事業承継は、重要な経営課題ですが、明確な期限もなく、差し迫った理由がないと、なかなか進まないといわれています。
 しかし、事業承継には5~10年という長い準備が必要です。後継者が決まっていれば「育成」、後継者不在であれば「第三者への譲渡」などを検討しなければなりません。


不正が起こりにくい仕組みをつくろう


 従業員数が少ない企業では、「日常業務が1人の従業員に集中」「仕入から販売までの一連の事務処理が1人の担当者」など、業務の流れの中で、他者チェックができない環境が多く、不正やミスが発見されないことがあります。
 不正やミスを未然に防止し、早期に発見するためには、社内の牽制機能を働かせることが理想ですが、難しい場合には、例えば、銀行取引、口座新設は必ず社長や上司の承認を得ること、得意先・仕入先と新たに取引する際は、担当者以外の者がチェックするなど、重要な業務については社内ルールを明確にして、定期・臨時のチェックを徹底しましょう。 


2017年10月号

 決算書の信頼性を高める中小会計要領


 「中小会計要領」(中小企業の会計に関する基本要領)は、中小企業のための会計の共通ルールであり、多くの中小企業がこれに準拠して決算書を作成しています。共通ルールで作成された決算書であれば、金融機関は、融資先企業の客観的な評価を行うことができるうえ、自社への信頼性も高まります。
 社長の経営判断においても、前月比較、前年同月比較、他社比較などが、より精度の高い数値で分析できるため、経営判断が的確になります。


面倒な相続手続を簡素化「法定相続情報証明制度」が始まりました。


 相続が発生すると、不動産や銀行口座の名義変更などの相続手続を行う必要がありますが、登記所や金融機関に、相続関係を証明するための戸籍関係書類の束を、その都度提出する必要があるなど手続が大変面倒でした。
 「法定相続情報証明制度」は、戸籍関係書類の束に代えて、法務局が発行する「法定相続人が誰か」を証明した「法定相続情報一覧図の写し」を利用することで、相続手続の負担を軽減するための制度です。(5月29日運用開始)


本格化まであと半年!
パート・契約社員の「無期雇用への転換」とは?
 
 


 有期雇用契約のパート・契約社員の雇用期間が5年を経過すると、労働者から無期雇用への転換の申し出ができる「無期雇用への転換ルール」が、施行から5年を経過する来年4月から本格化します。
 経営者に正しく理解してほしい点は、「無期雇用への転換は、正社員にすることではない」「単に有期から無期雇用に転換するのみであれば、賃金などの労働条件を変更する必要はない」「無期雇用の場合、解雇については正社員と同様の扱いになる」ことです。    


2017年9月号

 早期経営改善計画とは  


 「早期経営改善計画策定支援」は、「資金繰りが不安定」「売上減少の要因が不明」「自社の状況を客観的に把握したい」といった中小企業の取り組みを支援する国の事業です。税理士等の専門家(認定支援機関)が、計画策定の支援、その後1年間のフォローアップを行います。
 計画書の作成を通じて、経営課題の発見・分析ができ、資金繰りの把握が容易になります。計画書を金融機関に提出し、達成状況を一緒に確認することで、関係強化をはかる機会にもなります。


増える「ふるさと納税」
~ワンストップ特例と確定申告による控除はどう違う~
 
 


 ふるさと納税は、平成27年から、控除限度額の拡大や確定申告が不要なワンストップ特例制度が始まったこともあって、昨年は、寄附した人が225万人と前年から倍増しました。
 ワンストップ特例の利用条件に当てはまる人にとっては、確定申告とワンストップ特例の“どちらの方法が税金は得なの?”といった疑問があるようですが、どちらも控除される税額は同等で、控除の方法が異なるだけです。ワンストップ特例は、控除税額の全額が翌年度の住民税からの控除になります(還付はありません)。


クレジット加盟店に安全対策を求める改正割賦販売法 


 クレジットカード情報の漏えいや偽造カードによる不正利用の被害が増加しています。昨年12月に改正割賦販売法が成立し、クレジットカード加盟店(小売店等)には、カード情報の非保持化やカード決済端末のIC対応化などのセキュリティ対策が義務づけられました(平成30年6月施行)。
 小売店や飲食店などでは、カード決算端末のIC対応化のため、端末の追加、入れ替え、システム更新などが必要になります。ネット通販業では、「なりすまし」による不正防止のため、パスワードやセキュリティコードによる本人確認の仕組みが義務づけられます。


2017年8月号

 自社の健康診断ツール「ローカルベンチマーク」って何?


 金融庁は、金融機関に対して、「ローカルベンチマーク」(ロカベン)によって、融資先の経営者と対話しながら、経営改善や生産性向上を積極的に支援することを求めています。
 ロカベンとは、経済産業省が策定した企業の経営診断ツールで、売上増加率、営業利益率、労働生産性などの財務情報と、ビジョン、製品・サービスの内容、技術力・販売力などの非財務情報をもとに、経営者と金融機関や税理士などの認定支援機関等が対話しながら、将来の可能性を評価し、今後の方向性を導き出すものです。
 ロカベンを利用することで、経営者と金融機関等が同じ目線で、経営改善を進めることが期待されています。また、ロカベン帳表は、TKCローカルベンチマーク・クラウド」から作成可能です。


ITを活用した「新サービスの開発」にも税額控除を適用


 製品の製造や技術の改良・発明等にかかった試験研究費の一定額を法人税額から控除できる研究開発税制は、これまで製造業を中心とした制度でした。平成29年4月から、IoT(モノのインターネット)やAI、ビッグデータ等を活用した「新たなサ-ビスの開発」にも適用対象が広がり、ITや情報サービス系の企業でも税制の優遇を受けやすくなりました。
 また、中小企業の研究開発投資意欲を高めるインセンティブとして、試験研究費の増加率が5%を超える場合には、最大で17%まで控除割合が上乗せされました(2年間の時限措置)。


残業時間と残業代の計算方法を正しく理解しよう!


 残業時間と残業代については、誤解が多いようです。法定労働時間「1週間につき40時間、1日につき8時間まで」を超えると残業になり、時給単価に25%以上の割増賃金を支払わなければなりません。夜22時から翌朝5時までの時間帯の残業については、50%以上の割増賃金になります。
 法定労働時間内であっても、会社が決めた所定労働時間(例:1日7時間就業など)を超えると残業になり、残業代を支払う必要があります。ただし、法定労働時間内の残業については、賃金の割増は不要です。
 なお、残業代の時給単価の計算には、家族手当や通勤手当、住宅手当などを含める必要はありません。